もじゃトラックス

コンゴニの存在する意味

先日太鼓の練習をしてきたんだけど、まだマリのリズムに触れて日の浅い人からこんなセリフを聴いた。

「コンゴニが存在する意味が分からない」

これは大変なことだ。コンゴニはマリの演奏の核。コンゴニすなわちリズム。いなくなっては困る太鼓。一番楽しく大事な太鼓。それがコンゴニなのだ。

今回はコンゴニに対する思いのたけを書いてみようと思う。コンゴニを好きでない人、コンゴニって何?って人はぜひ読んでほしい。

マリスタイルとギニアスタイル

ギニアで主に演奏されているマリンケやススのリズムの編成と比較してみると、マリスタイルの特徴が分かりやすい。
厳密な分け方ではない(そもそもキッチリと分けられない)けど、僕の周りで広く親しまれているその形を便宜上マリスタイル/ギニアスタイルと呼ぶことにして、それぞれを説明してみる。

ギニアスタイル

ギニアでは、ケンケニ・サンバン・ドゥンドゥンという3つの牛皮の太鼓にそれぞれ担当がつき、左手の鉄の棒でベルを叩き、右手のバチで打面を打つ。
このベルがとても重要で、細かく刻んでいるうえに少しずつ異なるベル同士が噛み合ってガイドとなり、強固なアンサンブルを作る。ジェンベなどフロントの太鼓は、この土台の上で叩くような感じだ。

マリスタイル

マリのリズムを構成するのは、大体コンゴニ・カスンケ・ジェンベの3台が基本となる。
バチで叩く太鼓のうち、ベル付き&大きいのがカスンケ。ベルなしで少し小さいのが話題のコンゴニ。
ソロをつとめるフロントの太鼓はカスンケとジェンベ、たまにタマ。
コンゴニ以外はみんなダンスにソロをつけられるので、どの太鼓がどう遊ぶのかは演奏隊によってさまざまだろうと思う。

コンゴニは、ヤギ皮の「バン」という無骨な音と、そのミュート(打面を抑えるように打つ音)で、基本的にはそのリズム固有のフレーズを打ち続ける。なので一見変化がないし、ベルがつかないし、カスンケほど大きな音も、ジェンベほど分かりやすい色んな音もない。ないない尽くしだ。

そういうところがあって、コンゴニはリズムに干渉しているという実感があまり持てなかったり、地味に映りがちかもしれない。


※これはコンゴニ購入前の動画なので代用でサンバンを叩いています。申し訳ない。

コンゴニの立ち位置

今紹介した2つの動画はリズムの成り立ちを説明するためのものなので淡々とやらせてもらっているけど、コンゴニに関して言えば、実際はとても柔軟で変化に富む太鼓だ。

コンゴニはリズムの土台とノリを提供しながら、ソロプレーヤーに合わせる。ソロプレーヤーの速度やフレーズが変わればコンゴニが即座に合わせていく。ダンスがあればお互いダンスに合わせる。

ジェンベとコンゴニはぴったり寄り添って、お互いに間を縫うようにして、時間を同じテンションで埋めていく。

盛り上がった時のコンゴニの音圧はものすごい。その威力たるや、さっきまで理解できていたリズムが未知のリズムに聞こえ出すほどだ。ソロプレーヤーやダンサーに絶対に聞こえさせる、リズムの土台であり続けるために、ありったけのエネルギーが要求される。

ジェンベはいろんなフレーズを叩くけど、それ自体では完成しないと僕は思う。ダンスやコンゴニが合わさって初めて、このリズムのソロフレーズ/アコンパであるという意味が添えられる。ダンサーやコンゴニフォラがいることでジェンベは活きるし、その逆も言える。お互いに不可欠なのだ。

全部揃ったら自然と笑顔がはじける。

これはリラックスしたコンゴニ。これもまたオツ。

コンゴニにベルはいらないのか?

このことを踏まえると、コンゴニにベルがつかない理由が見えてくる。

・軽めの太鼓だし、しっかり叩くために片手で太鼓を支えたい
・右手のリズムが既に完成形。そこに集中すればいい
・コンゴニはジェンベを聴きたいし、ジェンベもコンゴニを聴きたいのでベルは余計
・マリではベルはカスンケの大事な要素なので、コンゴニがベルまで叩くと余計
・アコンパ以上に細かくベルを打ち続けると柔軟性がなくなるし、合わせる楽しみが減る

ここまで言っておいて、ベル叩いてるコンゴニの人いたらごめんなさい。笑
叩かない理由を推測しただけで、何が何でも叩くなというわけではもちろんないので。

ちなみに他のバチ太鼓については…
カスンケ:ベル不可欠。少なめの音数でソロフレーズを叩くので、ノリを作るためにも保つためにも細かいベルが合う。
タマ:ベルなし。両手で1つの打面を叩くので手が足りない。でもそのおかげでベルぐらい細かいフレーズが叩けるし、カスンケとジェンベとコンゴニの役割を少しずつミックスしたような立ち回りができる。

書いててやっぱりというか、改めてそれぞれの太鼓のありようはよくできてるなと思った。超面白い!

マリから仕入れしている太鼓工房↓
Tokyo Djembe Factory

まとめ

結局言いたいことは、
・コンゴニは超必要
・コンゴニは変化するジェンベやカスンケに能動的に合わせていくもの
・コンゴニは一番聞こえるぐらいでぜひお願いしたい
ということ。

だから他の太鼓のソロフレーズを本当は知っておいた方がいい。フレーズや、リズムのノリや訛りも知っている状態じゃないと、そこまで自信をもって合わせられない。

コンゴニを叩くのであれば、コンゴニがある状態でジェンベのソロフレーズを叩きこんでほしいし、ソロフレーズやダンスに合わせてコンゴニを叩いてみてほしい。カスンケもダンスも習って見て欲しい。マリに行って見てみて欲しい。そしたら僕の知らないコンゴニの叩き方も教えて欲しい。笑

コンゴニをしっかり叩くと、みんなが楽しくなってくれるので貢献具合は半端なく、すごく楽しい。そして、とてもポジティブでプライベートな演奏空間ができる。構成員が少ないから、結びつきが強いのかな。それがマリのリズムの醍醐味の一つだと思う。

現地スタイルを知ってみよう。
思いっきりやってみよう。

あー、叩きたくなってくる!できればダンスと。