もじゃトラックス

1年ぶりにダンスバトルに出たらコテンパンに負けた話

数週間前、千葉のとある野外会場でダンスバトルが開催されることを知った。
HEATWAVEと言って、フリースタイルのダンス大会だ。一般部門、中高生部門、小学生部門の3つで、参加者の中から1位を決める。

フリースタイルといっても、国内でバトルを行う文化のあるダンスジャンルと言えば限られていて、ブレイキング、HIP HOP、ポッピングがメインといった感じだった。
あと、女性はウネウネ系の人とかがいた(ジャンル名は分からない)。

ここにパンツーラで出たら、あわよくばいい結果でも残せたら、さぞ目立てるだろう!パンツーラの認知向上に悩んでいたし、自分の力も試したいので、すぐ参加を決めたのだった。

本番当日

ところが開催日の天気予報を追っていくと、どうもかなりの確率で雨が降るようだ。野外ステージなので、客席には雨をしのげるところはほとんどない。

友達やパンツーラの生徒さんを誘うとしても、ほとんどの人は県外からくるわけで、遠出してもらって雨の中見てもらうのは気が引けた。なのでほとんど誰にも言わないまま、先週ひっそりとバトルしてきたんだけど、結果的には人を呼ばないで正解だった。

これ以下はないという成績…予選落ちとなったからだ。

予選

一般部門のエントリー人数は60人だった。ここから、トーナメントの16人を選出するため、4人中3人は落とすことになる。

20人のサークルを作って、一人ずつ最大45秒間踊り、全員踊り終わったら審査員が5人(または6人)選ぶ。それを60人分、3回行う。しかも中高生部門、小学生部門もある!かなりカロリーの高い予選だった。

倍率は高いけど、1/4ぐらいなら残れるだろうという自信はあった。
なにせ、パンツーラなんて目に新しいだろうし、ダンスの魅力も練習量にも自信があった。最近は週に何回かは踊っていたし、いつものように曲に合わせて遊べばいいか、ぐらいでいたはずなのだが…

いざ自分が踊ろうとしたとき、既存のコレオを踊ることを選んでしまった。
コレオというのは、ストックしてある、先生たちから習った長めの振りだ。完成度は高いけど、自由ではない。

もちろん、合間合間にアレンジを入れたりステップを切り貼りすることで自由に踊ることもできるのだが、その時はちゃんとしたパンツーラを見せたいという意識が勝ってしまった…。あるいは、自分の即興ダンスを見せるのに怖気づいてしまったのだろう。

踊っていても、周りの反応が薄い。曲に合わせて踊ることを放棄したのだから当然だ。余裕がなく、踊らされたような感じになる。最後の方はアドリブを入れてみたけど、ギクシャクした動きになった。全然楽しくなかった。

そんな感じで、普通に落選。午前中で僕のバトルは幕を閉じた。

落ちたことはもちろん、箸にも棒にも掛からないようなパンツーラを見せてしまったことも悔やまれた。

初めから終わりまで土砂降りの予選だった。

負けた後

予選の他のダンサーはどうだったかというと、20代から50代ぐらいまで、性別も年代も個性も様々で一概には言えないが、印象に残るのはやはり実力者だ。
見ていて飽きないダンス、曲の勘所を外さない上手で気持ちいいダンスを踊る人や、突飛な衣装と演出で場を沸かせるエンターテイナーなど。
そういうダンサーは、既にMCや回りのダンサーの顔見知りであることがうかがえた。経験豊富なベテランというわけだ。ダンス自体も面白いし、培ってきた人間関係の強みもあり、イベント全体を盛り上げてくれる。

ただ、予選落ちしたダンサーのほとんどはトーナメントが始まる前に帰ってしまった。小学生なんか、親御さんと連れ立って帰ってしまうのでなかなかの引き潮具合だ。

気持ちは分かる。何が楽しくて大雨の中、自分のいない、他人の勝ち上がるトーナメントを見なくちゃならないんだと。僕も若干帰ろうかなと思った。笑

でも、負けたからと帰ってしまっては、みじめさに拍車がかかる。勝っていれば残っていたわけで、ちょっと自分に都合の良すぎる振る舞いじゃないか。
敗者にも、場を盛り上げる役割がある。それで自尊心も少しぐらいは回復できる。何より、イベントは大抵後半に面白くなる。
そういった考え方ががもう少し一般的になればな、と勝手ながら思った。

幸い途中からは雨も止んだし合間にはDJタイムがあったので、バトルのプレッシャーから解放されてダンスや観戦を楽しむことができた。

トーナメント

午後からは3部門それぞれで、予選で勝ち上がった16人のトーナメントが始まった。一人ずつ踊る予選と違い、1対1でダンスをぶつけ合い、審査員5人の投票(指さし)ですぐに結果が発表される。

全体的な感想を書いていこう。

小学生部門

子供といえば、元気なことや体をいっぱいに使う感じがほほえましいよね…とステレオタイプな構えで見ていたら、構成もうまく作って踊る子が多くてびっくりした。曲をよく知っているのだろう、音にも動きをしっかり合わせてくる。

もちろん、エネルギーをぶつけるような発散系の子もいた。いずれにせよひたむきで素晴らしい。

そして、結果発表で喜びや悔しさの表現は二の次で、すぐに両者握手/ハグして讃えあう。その爽やかさが、自分の中のこどものイメージとかなりギャップがあった。もっと一喜一憂しないんだ、という。勝負の場での礼儀みたいなところがしっかりしている。

準決勝あたりまで来ると、ダンスも態度も尊くて畏怖の念を感じてしまっていた。小学生すごい。

中高生部門

中高生ともなると、もうスキルも出来も大人顔負けみたいなダンサーが増える。
印象的だったのは、優勝したB-BOY(ブレイクダンサー)の男の子だ。

個人的な話になるけど、これまでブレイクダンスというのがかなり気に入らなかった。
ブレイクダンスは床を背中や頭で回ったりして、ちょっと危険で大ぶりな技を見せるダンスだ。回ってからポーズを決めるのは音楽に合わせにくいし、技も似通ってくる。その完成度を競っているようで、ダンスというより体操の一種みたいな印象を持っていた。(B-BOYの人いたらごめんなさい)

ところが、その優勝した子のブレイクダンスはしっかりとダンスに見えたのだ。
自分なりにアドリブで動いていることが分かるし、決めポーズの気合と気持ちよさが伝わってくるし、音楽にも合わせてくる。思わず歓声が上がる。否応なく感動させられてしまう。これがブレイクダンスか!という気持ちになった。あっぱれだった。

決勝で相対したHIP HOPの男の子も凄かった。まだ中学生だろうに、とてもクリエイティブでユーモラス。今あんなに踊れたら将来どうなっちゃうんだろうと思った。

一般部門

大人の戦い。それぞれが何を重視してきたのかという生き様みたいなものが出ていて面白いなと思うダンスが多かった。
審査員の言葉で「フリースタイルは人間性のようなものがドバっと出れば勝てる」というのがあったけど、まさしくそうだなあと思った。
ただ、それでも審査は割れる。正解なんてないのだ。

何のジャンルを踊っているのかなんて、見ている方にも関係なくなってくる。もう完全に個人対個人の戦いだ。
その人がどれだけ自由なのか、どれだけ練習してきたか、気持ちが入っているか、会場を湧かせられたか。そして戦う二人の間のコミュニケーション。組み合わせによって、バトルによって全然異なる色。
人がやってるのに、人知の及ばない何かを見せられているような感触さえ覚える。これで熱くならないわけがない。拍手にも力が入った。

↓それぞれの部門の優勝者。ブラボー!

まとめ

トーナメントは3時間以上あったんだけど、あっという間だった。

正直言って日本人の踊るストリートダンス(ショーケースとか)は今まではあまり好きになれなかったけど、気持ち的にも盛り上がるイベントで、1対1でガチでバトっているストリートダンサーたちを見て、考えが変わった。ストリートダンス、面白い!
そして、自分ももっと情熱を向けてダンスしていこうと思った。

たぶん、生でこういうシーンを見ることがなければ一生その良さは分からなかったんだろうなと思う。アフリカンと全く一緒だ。まるごと経験して初めて分かることがある。

こうやって書くのもいいね。気持ちにピリオドが付く。

以上、ポジティブな負け犬の戯言でした。