もじゃトラックス

南アフリカ・マリの旅 ~いきさつとか~

9月末で会社を辞め、南アフリカに来ており、来週で3カ月がたつ。その後はマリに行ってまた3カ月滞在で帰国、という半年スケジュールのアフリカ旅行だ。

人生で最後かもしれない長期アフリカ滞在、その行先を南アとマリにした理由を書いていこうと思う。

マリ

学生時代に太鼓を習うために行った国。もう一度行くことにしたのは、毎年開催されるマリツアーの現地近況を見て「あの空気をもう一回吸いに行きたい」というノスタルジーが生まれたのがきっかけだった。

今回は音楽の他にダンスもできれば習おうかなと思っている。学生時代、タリベ(アフリカンサークル)の先輩がマリで習ってきたジェンベのソロフレーズに惚れこんでからというもの、マリのリズムは僕のアフリカン生活の中でずっと特別だ。

マリの定番リズムには、”このリズムをやるなら、このフレーズ(ノリ)を基本に展開していく”といった約束がはっきりしているものが多い。カスンケという両面太鼓もジェンベと同時にソロをやったりして、そのリズムならではの時間を作る。それがソロフレーズの説得力や魅力につながっているのかなと思う。

また、ジェンベの音色にも特徴がある。スラップは乾いた鋭い音で、トンも高くてスラップと間違えるほど解放感がある。それは、ジェンベと同じヤギ皮で作られるコンゴニやカスンケの音色に対抗してそうなったのかもしれない。ヤギ皮の太鼓は皮自体を鳴らしている感じがあって、ドンというよりバンなのだ。僕はまだちゃんとそう叩けているわけではないけど、あの爆竹みたいな音色にはずっとあこがれている。音の短くて瞬発的なところが、周期の短いマリのリズムに合っている気がする。「ここ!これだけ!」を繰り返す感じ。熱が入る!

学生時代、休学してマリに行ってきた先輩らの影響で自分もマリに4カ月行ってジェンベやカスンケ、歌を習った。
でも、取りこぼしたものも多かった。習っただけで、ちゃんと身についたとは言えない感じ。それは、僕が単純に下手だったのと、広く浅くのネタ(フレーズ)優先、ニュアンスや音色は二の次、という悪い意味でのコレクター気質のせいもあったと思う。

今回はそのリベンジ的な思いも持っている。前行ったときよりずっと自分も成長しているので、より深く学べると思う。マリの定番リズムのダンサやサンジャのルーツ、カスンケ人の地域の大きな町、カイに行くつもりだ。大好きなリズム、マラカのルーツも近いはずで、じゃあスヌも・・・と欲が止まらない(悪い癖)。リズムを絞ったとしても太鼓も何種類もあるし、今じゃダンスにまで首を突っ込んでいて習いたい対象が多すぎる。3カ月で何ができるのか・・・お金は以前の滞在時の基準で、ぎりぎり週5クラス分ぐらいだ。本当は一日1クラス分ぐらいあったんだけど、南ア滞在を伸ばしてしまったので足りなくなった。笑

「思い通りに行かないだろうから柔軟にやりなよ」という助言が頭に残っており、流れに身を任せてみようと思う。

南アフリカ

現地のダンスを習うために来た。僕は数年前ダンスにハマってから、セネガルのサバール、ガーナのアゾント、マリのダンス(トラディショナル)、と西アフリカ中心でやってきたんだけど、もう一つ、ひっそりとやっていたのが南アのPantsula(パンツーラ)というダンスだ。

パンツーラは、アゾントとサバールの先生であるFATIMATAさんと活動を共にしているAYUさんというダンサーが教えてくれた。彼女が数年前現地で習って日本に持ち帰ったダンスで、FATIMATAさんがAYUさんから習う機会を用意してくれたのだ。

クラスはいつもその歴史の説明から始まる。パンツーラは南アでアパルトヘイトの時期に生まれたダンスで、抑圧に対するレジスタンスの意味合いがある。だからパッションとかエネルギーがとても大事で、それが動きのキレとか音の大きさに表れるように踊ろう、と。

音の大きさ、というのは地面を踏むときに出る音についてだ。sparaparaと呼ばれる、地団駄を踏むだけの定番ステップを最初に習うんだけど、AYUさんの音は凄まじかった。爆竹が鳴っているのかと思うぐらい大きくて鋭い。

パンツーラは足でリズムを作っていくのが中心となる。体全体を使うということがほとんどなく、基本的には足だけ動かす。それも、細かい動きでキビキビと直線的に。展開は速く、同じステップをループさせるということがほとんどない。

こんな具合で、他のアフリカンダンスと違うことだらけな変わったダンスだ。というか、ジェンベを叩くことと似ている。ダンス開始の合図も手拍子でジェンベで言うコールのように出すし、現地で分かったんだけど、足でスラップもトンもヒール&トゥも出す。動きを習得するコツは、ジェンベのフレーズを覚えるときと同じように、リズムを口で唱えること。

これで好きにならないわけがない。キレやパッションが特に要求されるところなんかマリの太鼓に似ている。

興味が高まると、飢餓感も募っていった。パンツーラは基礎でも独特な動きで難しく、30秒のコレオを通せるようになるのにも半年がかりだった。自主練もするけどなかなか自分のものになった感触が持てない。マリ行きの時期が決まったとき、南アにも行きたいなとなったのは自然な成り行きだった。

ただ、現地に行っても果たしてパンツーラがちゃんと踊れるようになるのかどうかについては、半信半疑だった。手の届かないところにありそうな感じ。あと、このダンスが自分の求めるものなのかなとは少し思った。クラブでゆるゆるとずっと踊れるようなものじゃなさそうだし、体のうねりみたいなアフリカのダンスによく見るやつもない。違うなと思ったら、アゾントに似てる別のダンスをメインで習うつもりすらあった。

でも、来て1カ月経ったらそういった懸念は吹き飛んでしまった。色々想像を超えて楽しくて、気づくとそれなりに上達していた。パンツーラの沼は思っていたより、Youtubeで見ていたより、ずっと深かった。すっかりハマってしまい、抜け出せず、滞在期間延長までしてしまう始末。これほどの経験になるとは・・・
末永く続けていきたいなと思った。

最後に

もともと海外旅行には苦手意識を強く持っている。音楽やダンスという目的がなければまず行っていないと思う。現地語を習得していくのも面倒だし、慣れない集団の中で過ごすのもしんどいし、知らない場所での交通・宿泊・行先を自分で開拓するのは不安しかない。だからこうやって一人旅しても観光とか滞在先変更とかはせず、同じところにずっと留まっている(だから「旅」というと少し違和感がある)。

そんな僕の不安を軽くしてくれたのは、1年前にFATIMATAさんの年末ガーナセネガルツアーに参加した経験だ。あのツアーで、今の時代に知らない国を旅する上での基本的な事柄にイメージが持てた。また、犯罪率だけ見れば危険なヨハネスブルグ近郊で楽しくダンスできているのはAYUさんにちゃんとした滞在先の紹介をしてもらったおかげだ(治安についての釘刺しはそれ以上にしてもらった)。
マリについても、毎年のツアー開催やその様子の報告があったからこうしてまた行く決断ができた。

現地体験をサポートしてくれたり、日本でダンスや太鼓を伝えてくれる人たちには感謝してもし尽くせないとつくづく思う今日この頃。いろいろお返ししていきたいなと思う。

ではまた!

関連記事

パンツーラはなぜ足ばかり使うのか

マリレポ ~ケンケバ先生~

パンツーラはアルプス一万尺の精神で踊るべし