パンツーラはなぜよくかがむのか


ダンスって、特にストリートダンスは、正面を向いたまま、立ち姿を基本的には維持してやるもの、というイメージがないだろうか。人に見せるときはそれがメインでいいんだろうけど、それでもちょっとは変化がないとつまらない。今回は、Pantsula(パンツーラ)でよくされている味付けついて書いてみる。

パンツーラは変化に貪欲

パンツーラでよくやるのが、体勢の前提からリセットするような変化をつけていくことだ。腰から折るようにかがんだり、四つん這いになったり、寝そべったり、座ったり。横や後ろを向いて踊ったり、首を傾けたり、いきなりジャンプしたり。そして、あちこち移動したり。

こういう動きにも一応理由らしきものがある。「らしきもの」というのは、例によって、聞きかじりと調べものと想像のブレンドだからだ。話半分で聞いてもらいたい。

パンツーラはズールー人の伝統舞踊の流れを汲んでいて、地面の下にいるとされる先祖とのコミュニケーションという意味をそのステップに込めて踊っている、というのは前に書いたけど、もう一つ別の話がある。「パンツーラはいろんなところを向いたり、よくかがむのが面白い」とブシ先生に言ったときに答えてくれたんだけど、パンツーラダンサーには「サン」という民族の文化に対するリスペクトがあるらしい。

サン人と地面

サン人は南部アフリカのカラハリ砂漠(サバンナ地帯)に住んでおり、今でも狩猟採集で暮らしている少数民族だ。

彼らも、ルーツをズールー人と共有しているのか、地面をとても尊いものとしているそうだ。その考えを進めると、地面に近いものほど素晴らしい、ということになる。同じ人間でも、大人より子供の方が、腰の曲がったお年寄りの方が、生まれたての赤ん坊の方が、地面により近くなるから尊いものとされる。ちなみに、サン人は平均身長もかなり低めだ。

そういえば、有名な古典なぞなぞに、「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足、なーんだ」というのがある。答えは人間。なぜなら生まれたばかりはハイハイだから4本足、成長したら2本足、年をとってからは杖をつくので3本足だから。それを思い出す。

サン人の間で特に神聖視されているのが、常に地面に近い姿勢で生活している四足歩行の動物だ。サン人のシャーマンは動物のように歩く憑依状態になるそうだ。普通の人もジェスチャーとかが好きとのこと。

ちょっと考察

そんなサン人の影響もあって、パンツーラダンサーは好んでかがむらしい。ちなみに、パンツーラの語源は「アヒルのように尻を突き出して歩く」だ。

これは僕の想像なんだけど、警戒心が強くてキョロキョロしてる動物の機敏な動きを模してきたから、首や体の向きをあちこち変えていくような発想が出てきやすかったんじゃないだろうか。細かくキレのある動きも、動物のふるまいと相性が良さそうだ。

また、大きく移動したりかがむのは、歩き回って木の実を拾ったり、身を潜めて狩りをするサン人の生活も表したりしてそうな気がする。パンツーラは基本の動きがせわしなく小さめなので、そういった大きい変化があると、ちょうどバランスが取れる。

体勢の変化がもたらすもの

パンツーラでは、踊ってるときに見える風景がよく変わる。移動したり、体勢を変えたり、明後日の方向を向いて踊るというのは、気分転換にもなるし、鏡を意識しないでいいので、気楽だ。一緒に踊る人には、定住しない狩猟採集民族ならではの解放感(?)もぜひ味わってもらえるようにしたいなと思う。

最後に、現地で習ってた先生たち(IMPILO MAPANTSULA)のPVを貼っておきます。
今回書いてることがちょっと分かると思う!

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