昨年12月からパンツーラを習い直すため、南アフリカに3年ぶり2回目の滞在に来ている。(経緯はこちら)
鮮烈だったダンス体験のピックアップと、その感想を書いていこうと思う。
初めて見れた!信号待ちで踊るパンツーラダンサー
ヨハネスブルグの空港に着いて先生たちと合流し、滞在先へと車で向かう途中に、とても貴重なものが見れた。車道で踊るパンツーラダンサーのパフォーマンスだ。
信号が赤の間に踊り、車のドライバーからチップをもらう。そういう活動をするダンサーがいることは知ってたけど、実際に見るのは初めてだった。
パンツーラにはユニークな動きや驚かせるような動きが多く、「芸」として見せやすいダンスだ。彼がやってるのはその中でも特にパフォーマンス性の高いスケルティンというジャンルで、関節を外してるかのような動きと帽子を使ったアクロバットが圧巻だ。
近くでダンスを見せてもらったときに彼の帽子を間近で見たんだけど、その布地はボロボロに擦り切れていた。日頃の踊り込み、パフォーマンスに賭ける生き様がそこに直接感じられて、身の引き締まる思いだった。
キッズクラスの盛り上がり
滞在先のImpilo Mapantsulaというダンスカンパニーでは、キッズクラスがとても盛況だった。三年前は生徒としてパンツーラを踊っていた青年たちが成長して、今は先生として教えていたのが感慨深い。
キッズクラスではパンツーラ以外にも色んなダンスのプログラムが同時進行していた。プログラムごとに同じぐらいの体格のグループ分けがされていたけど、パンツーラのクラスは全員参加のようですごい人数でやっていた。
https://twitter.com/wozamoja/status/1467128646821457921
そして、南ア発のポップ音楽アマピアノ。世界的に流行り始めている、とても勢いのあるハウス音楽ジャンルだ。ダンスクラスでも大人気で、今の流行曲の一つ「Adiwele」をみんなで歌っている様子がとても楽しそうだ。
アマピアノの流行り具合よ pic.twitter.com/pagfu3m4uu
— もじゃ (Moja) (@wozamoja) December 4, 2021
彼らのアマピアノダンスの作品を一部上げたのでぜひ見てみて欲しい。その自然なグルーヴ、一体感に感動してしまう。
アマピアノ世代のショーがカッコ良すぎた
choreograph:Elma Motloenyahttps://t.co/z6kTHSZU6r#wamuhle pic.twitter.com/Xzj16ZOZuw— もじゃ (Moja) (@wozamoja) December 4, 2021
クラスでは子供たちが学年によらず楽しく交流していて、その様子がとても幸せそうで胸が熱くなった。
ドラッグの誘いや交通事故に遭わないようにと、親御さんたちから子供たちの安全な居場所としても求められているとのことだった。
自分のコレオを踊ってもらえた!
キッズクラスの先生である青年たちとは、三年前の滞在でも親しくさせてもらっておりみんな仲がいい。
話をしていると、日本での僕のパンツーラの活動をSNSで見てくれており、僕の作ったコレオを一緒に踊ってみたいとのこと。
日本製のパンツーラの逆輸入!これは熱い。作った中の一つ、数十秒のコレオを教えてみた。
ステップ一つ一つは彼らも慣れ親しんだものなのですぐに習得してくれるんだけど、細かく見ると解釈が人それぞれで、個性豊かで面白い。
ちなみに今はこのコレオに彼らの持ちネタであるコレオがくっつけられて、一つの長いコレオになっている。パンツーラはハウスなどの展開の起伏の少ない曲で踊るので、曲のキリのいいところから踊り始めなくてもいいという特徴がある。そのため、持ち合わせたもの同士つなげて踊ることがしやすい。そうやって見ごたえのあるショーができていく。
日本製と南ア製の作品を合体させて踊れること、それをまた日本へ持ち帰れることになんとも言えない有難さを感じる。
特に思い入れの大きいコレオになりそうだ。
思ったこと
路上ダンサーの、目を見張るような洗練された動きと仕草。幸せそう過ぎてこっちが泣きそうになるキッズクラス。子どもたちが放っている気持ちいいグルーヴ。個性豊かな動きのダンサー達との交流。
ダンスのレベルが高い。ダンスを取り巻く楽しみが大きい。どれも当たり前のようにそこにある。
この土地で紡がれてきた人々の生活、国民性、文化という途方もなく大きな土台が前提にあるということをひしひしと感じる。
そういった体験をするたびに「これぐらい楽しくやってみたい!感動できるものをやりたい!」という思いは強くなる。しかし、日本人としてとか、日本に帰ったとして、果たして同じものを目指すべきなのかということを同時に思う。
平たく言うと、「こんな風にはできない…」と思ってしまうことも多い。
大切なこと
そういう複雑な気持ちが伝わるのか、彼らがパンツーラのレッスンでよくくれるアドバイスがある。
「先生と全く同じ動きを目指すのではなく自分の(アレンジの効いた)動きをやれ」「もっとクレイジーにやれ」
人はその個性を発揮するときに一番輝くということ、他人にはなれないし「自分」から始めるしかないんだということを、彼らが一番感じているのかもしれない。あと、がむしゃらに思いっきりやることの大切さも。
考えてみれば、南アフリカのダンサーだって最初から踊れたわけではなく、試行錯誤にかけている努力や時間がそもそもけた違いなのだ。
自分の踊りについて最近停滞していたんだけど、答えはやっぱりシンプルで、「もっと色々試して、いざという時間を増やすだけだな」と思う。
どの動きが好きだみたいな感覚ですら、量を踊らないとハッキリしてこないということ。自主練も面白くやるには慣れがいるということ。
そういう基本的なことを、日本にいたときの何倍も踊って一か月と少したって、ようやく思い出し始めた。
もう帰国まで半分の折り返し地点に来ている。いいグルーヴを持ち帰れるように、日々大切に過ごそうと思う。
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