あの音に近づけたい!ジェンベ皮張りレポ


先日、ジェンベの皮が破れてしまった。皮にはとても強いテンションがかかっているので、何年かすると湿度の変化で皮が伸び縮みするなどの負担も重なり、バン!と破れる。

こういうときは太鼓屋さんに皮張りを依頼するのが普通だけど、自分で張るという選択肢もある。

自分で張ると、楽しいし、愛着がわく。ただ、手間もかかるし、太鼓屋さんほどしっかりした仕上げにできなかったり、大失敗する可能性もある。そういうリスクも含めて、自分で張るのは贅沢な体験だ。今回はお世話になっているTokyo Djembe Factory(TDF)のたくみさんの勧めもあり、久しぶりに自分で張ってみることにした。

方向性を相談

まずは工房長のたくみさんに、どんな音にしたいのかを聞かれた。

イメージにあるのはマリで習ったケンケバ先生のジェンベの音だ。叩いた手に残る感触はとても柔らかい。トンは鼓膜をビンビン揺らす中身の詰まった音、スラップは皮の音がスパンと気持ちよくて広がりのある感じ、そしてベースはトスッと歯切れがいい。

まあ、これらはケンケバ先生だからこそ出せる音なので無茶な要望なんだけど、理想としてはそんな感じだ。ケンケバ先生の動画も見てもらった。(便利な時代)

そしてもらったアドバイスがこちら。
・これは今もじゃの持ってるやつよりだいぶ口径が大きいから、同じ音を求めるのは難しい
・でも、このジェンベと同じ紐を使ってコマ数も今より減らせば、張りは近くなる
・皮は薄いよりは厚いほうがいいかも

コマというのは、紐を縦に往復するためにリングにつける小さい輪っかのことだ。コマを減らすということは、それだけ締める回数が少なくなる。また、ケンケバ先生のジェンベの紐はマリでよく使われている真ん中に芯の通っていない平紐で、芯のある紐より柔らかい。

つまり、アドバイスに従えば今までの張り方よりだいぶ緩く張ることになる。厚い皮を緩く張ったジェンベでとてもいい音のものを以前叩いたことがあったので、喜んでその方向で張ることにした。平紐を使えば外見もマリのよくあるジェンベに寄せられるので嬉しい。

コマ作り

コマを作っているリングの紐はとっかえるため全部外して、平紐で新しくコマを作っていった。もともとは34コマあったのを、今回は24コマにしてみる。数は適当だ。

上下のリングにコマを作り終わって今日は終わろうかと思ったら、佐々木さんが「縦紐を1周通して、どんな感じか確認してみたら?」と。試しに縦紐を通してみると、なんと上下のリングでコマ数が合わないことが判明!確認しながら進めたはずなのに…

「やっといてよかったでしょ?たまにあるからね」と佐々木さん。さすが本職。

コマ数を修正して、今度こそ問題なし!コマをつけない内側用のリングは、巻かれた布がボロボロになっていたのでアフリカ屋で新しい端切れをつけた(最終的には見えなくなるのでちょっともったいないけど)。これで皮を張る準備は完了だ。

皮張り

ジェンベには現地のヤギの皮を使う。TDFのストックから自由に選ばせてもらえたので、厚めのゴツイ皮にしてみた。荒々しい感じの見た目がなんとなく面白そうだったからだ。張る前に水に何時間かつけて柔らかくしたら、伸びをよくするために何度もしごく。

水で戻した皮は生きていた頃の柔らかさに近い。毛もついているし、マリに住んでいたヤギの皮が日本まで来て、これから自分のジェンベになると思うと感慨深い。

マリで抱かせてもらったヤギ

いよいよ皮張りにとりかかる。

鉄のリングを外した胴に皮をかぶせて、その上からリングをはめる。

折り返した皮は紐で引っ張ってまとめておく。(この状態を巾着と呼んだりする)

そして上から駒つきのもう一つのリングを嵌めたら、それに縦紐を通していく。

こうすることで下のリングに上のリングが引っ張られて、木に皮が押し付けられて張れるのだ。縦紐を一周すると、もう完成まであと少しという見た目になってきた。

これからはひたすら縦紐を締めていく。最初は手で引っ張るけど、だんだんと紐に張力がかかって固くなってくるので、途中からは棒なども使ってグイグイ締めていく。

何も考えずに締めていくと場所によって締まり方に偏りができてリングが傾いてきてしまうので、均等に力がかかるように確認、調整しながら、一度に締めすぎないように何周もやっていくので、注意力も体力も使うハードな作業だ。

締め始めてから2時間ほど経つと、リングが下に引っ張られて、打面より5mmぐらい下がってきた。実は前に自分で張った時、最終的にリングが下がり過ぎて非常にだらしない見た目になったことがあり、「後でもっと下がるからこれで十分かな」と終わることにした。

巾着は途中で切りました

数日後に皮が乾いたらもう一度締めるんだけど、そのときにもリングが下がるので、そこでちょうど良くなってくれるはずなのだ。

本張り、仕上げ

何日か経って、本張りをした。やることは前と同じで、縦紐を締めていく。でも、やっていく内にあることに気づく。「リングが下がってくれない!」

一見綺麗に張れているように見える

打面から5mm下のまま、ほぼ進展がない。正面(ヤギの首側)を叩きたいのに、そこが一番高くて、このままだと叩いたときに手の下側がリングに当たって痛い。後から考えるとリングが下がらない原因はいくつも思い当たったんだけど、もう後の祭りだ。時間をかけたのに、悔しい…!

でも試しに叩いてみると、音はかなり好きな感じだ。もっと張ればケンケバ先生のジェンベにも近くなるかも…?

よし、今のままでも叩けなくはないし、今後締めていってリングが下がってくれる可能性もある。手にタコができて平気になるかもしれない。なのでやり直しはしないぞ!笑

最後に残った毛を剃ろうかと思ったけど、叩く場所の毛は剃ってあったので放っておくことにした。

佐々木さんと打ち上げ

感想

問題はあるけど自分で張った今のジェンベ、やっぱり好感が持てる。飾り気のない平紐、茶色系の皮、暗いリングの色も相まってダークな外観。強めなヤギの匂いと、剃り残した毛。マイジェンベ感があふれている。ジェンベがよろしくねと言ってくれているような気がする。笑

意外と和室に合う

久しぶりの皮張りはいろいろと為になったけど、皮を直接見て選んだり紐をリニューアルしたりと具体的な目標に向けてこだわって張ったのは初めてだったので、それが何より楽しかった。

TDFは皮張りキット(動画付き)も売っているので、自分で皮を張りたいけど遠方で来られない、というはそれを買うのもオススメだ。

これからたくさん叩いていくぞー!
場所と道具と、その他諸々をサポートしてくれたTDFに感謝!

追記:早速叩いてみたやつ↓