年一で、MOJADAというライブイベントを開催しているんだけど、去年の夏(2021年)に五回目を開催していた。
そのMOJADA5の準備での出来事を、ちょっと長くなるけど話させてほしい。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
なんで野外にしようと思ったか。
理由は、2020年までさかのぼる。コロナが流行した最初の年だ。
その年の暮れにはいつものようにライブハウスを借りてMOJADA4をやったんだけど、
コロナの感染者数が思ったより上がってしまったので色んな制限がかかった。
・会場のキャパの1/3に人数制限したり
・マスクもお客さんには着用をお願いしたり
この2つはまあ、しょうがない。
ただ、会場からのもう一つのお願いには「ん?」となった
「感染防止のため、演者以外は声を出さないようお願いします」
というものだ。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
いやさ、そもそもなんでモジャダをやるかっていったらさ
お客さんに非日常の楽しい時間を過ごしてほしいわけなんよね。
なのに
ライブやダンスを見て歓声や笑い声を上げたら注意されるということだ。
「大声を出さないでください」って。
いや、美術館ちゃうねん。
とは思うんだけども
ライブハウス側もそういうことを口うるさく言わないと
感染者が出たときに営業停止になったりするから、しゃあなしにやっているんだという事情は分かる。
それに、こっちとしても、箱があってのイベントだから、迷惑かけられない。
万が一のことがあったらとも思うしさ。
だから主催者として、反骨精神は控えるし
箱から直接言われたらみんな素直だから、静かにしちゃうよね。
そんな感じで演奏にリアクションできない客席だったんだけど、
ステージがどうだったかというと、いいパフォーマンスをしてくれたチームがかなり多かったんだ。
良いバイブスというのは貴重だ。
それだけに「声を出すな」っていうことのもったいなさを一層感じた。
お客さんにも出演者にも申し訳なくて悔しかった。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
MOJADA4でお客さんが声を出せなかったことは、個人的には音楽の存在意義自体が問われるぐらいの制約だった。
一番盛り上がった時の自然なリアクションを制限されるライブイベントなんて、これだけの手間をかけて開催すべきなのだろうか?
だから、その翌年の企画では気兼ねなく声を出せる環境をまず選ぶことにした。
①ウイルスが例え持ち込まれたとしても、広い空間に散って密度が減ること
②人同士のスペースが充分に取れること
これを満たせる環境さえ用意すれば、ほとんどの人がマスクもしてるし、声を出しても感染は広がらない。
野外であれば①の発散が無限にできるので、よっぽど密集しない限りは感染症が広がることを心配しなくていいはずだ。
もちろん、消毒を始めとした対策も実施するけど、一番根本的なのは空間の広さの問題だから、お客さんのことを考えると野外がやはり必須。
去年(2021年)の4~6月あたりのコロナの勢いは、一時期よりは収まってきてたこともあり、
「今なら、野外なら声を出せる!」と思ってMOJADA5やYeboPaの企画に入ったわけだ。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
やってみて分かったんだけど、MOJADAで使ったような半分公共施設みたいな野外会場でのイベント開催は、めちゃくちゃ大変だった。
それはなぜか?
会場に音響設備その他諸々の用意がなく、自分で色々手配しないといけないからだ。
その理由は細かくは省くけど、
ざっくり言うと、会場からすれば、音響機材は持つメリットよりもデメリットの方がでかいからだ。
だから、機材はそれぞれのイベント主催の方で用意してくださいねーということになる。
ちなみに機材だけでなく、テントも飲食もだ。
となると、問題になってくるのは予算だ。問題はいつだってお金。赤字回避。
大量の機材を用意する分のお金を節約しようと、最初は友達から音響機材を借りて集めようとしたんだけど
どうしてもやっぱり都合つかなくて、最終的にはレンタル業者に外注することに決めた。
これが、開催日の2週間前という、かなりギリギリのタイミングだったのだ。
7月半ばぐらいで、いよいよ夏本番だった。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
ここで、音響機材レンタルはどのような形で行われるのか、という前提について
話させてほしい。
一言で言うと
機材を借りると同時に「人」を借りないといけないのだ。
音響機材ってめっちゃかさばるから、まずトラックが要るので、運送もサービスの範疇となる。
そして、モノを宅配してもらっても、その後に
運び入れ・セッティング、そして本番中のPAさん…
全部専門の人員が必要だ。
そこに、レンタルを頼む側からすると、問題が二つ出てくるのだ。
1つは、レンタル費用が高くなること。人が一番高いからね。
大きいのはもう一つの問題だ。
それは、その人員がレンタル会社に十分にいないってことだ。
音響レンタル会社って、イベントの少ない冬も越さないといけないから、抱える社員はなるべく少な目でやっている。
だから、夏は逆に需要の方が多すぎて引っ張りだこになるため、特に土日は人が出払っている。
機材レンタルは特殊な業界のニッチなサービスだから、当たり前に受けられるわけではない。
野外イベントをやってみて初めて分かったことの一つだった。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
というわけで、何個かレンタル会社さんに連絡していたが、人手の問題で断られていた。
そして、数件目のレンタル業者さんに問い合わせしたときに、印象的なやりとりがあった。
おっちゃん:
…そういうわけで、どうしても人員が足りなくて、ごめんなさい。
ぼく:
わかりました、他をあたります。
おっちゃん:
あの、千葉のあたりだったらかなり安く頼めるかもしれない会社しってます。良い会社さんなんで、よかったら連絡してみてください。運送費も安くなるし。
ぼく:
えっありがとうございます!
おっちゃん:
あと、今後、もしまた野外でやるなら、八王子に良い会場がありますよ。
そういうのも協力できるかもしれないんで、いつでも電話してくださいね。
ぼく:
マジですか!ありがとうございます。
なんか仕事お願いできないのに、親切にしていただいて、ありがとうございます。
おっちゃん:
…いやーあのね。
…
…私は今の若い人がかわいそうでしょうがないんです。
私にも中学生になる娘がいて。
でも、コロナで遠足や行事、部活もみんな中止になって、外出するなと言われ、友達と遊びに行きたくても、イベントがみんななくなってる。
若年層の今しかない青春はどうなるんだと。だからイベントを開催する人のことはできるだけ応援したくて、こういう対応させてもらってます。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
自分がその後なんて返したかは覚えてないけど、おっちゃんの最後のセリフは、心に刻み込まれた。
「若年層」「今の若い人」という表現は、彼が本気で社会のことを心配しているということの表れであるような気がした。
コロナで打撃を受けた産業はたくさんあると思うけど、もっとも不遇で、声も出せずに我慢していたのがイベント業界と、そして付随する音楽、ダンスなどの業界だと思う。その結果、一生で一番遊べる時期に遊べないという形で割を食ったのが若者だ。
※若者の範囲は、あくまで僕の基準だが歩き始められる状態から、義務教育が終わるまで。
すなわち1歳から15歳ごろまでとする
こういった業界は、遊びは不要というイメージのため不要不急と思われやすく、「声」と「密着」なくては成立しないので、感染症と致命的に相性が悪かった。
誰もが「社会のため」というお題目のために自粛するわけだけど、その社会のかけがえのない一員であるはずの特定の業界や、未来の担い手である若者の青春については、その自粛によって黙殺されていた。
おっちゃんとその娘さんは、誰のことも責められず耐え忍んでいた。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
音楽やダンスは不要不急なんかじゃない。
それどころか、人生を本当の意味で豊かにできる知恵の集積だということを、僕は人生を通してアフリカから学んできた。
あくまで、
「今の日本では」不要不急と
「みなされやすい」というだけだ。
言い古されたことだけど、経済発展した国は、ただ生きることはできても、生きるに値する人生を送るのは比較的難しい国になっていく。日本は衰退の勢いが目覚ましいのでなおさらだ。
そのうえ、個よりも集団の雰囲気(集団そのものではなく)を重視しすぎる民族性がその傾向に拍車をかけていると思う。
空気を読むことはすなわち保守への迎合であって、一番自由から遠い。つまり一人一人の幸せは犠牲になる。
それはコロナ前から年々その方向に向かっていて、コロナはそれを加速させただけだ。
しかし、だからこそ日本では、音楽とダンスの存在意義が他のどんな国よりも大きいと思う。
音楽とダンスには、慰めや気晴らしのような効果しかないと思う人が多いと思う。
でも、実は本当に、こういう行き詰まりとか泥沼状態を打破する力があるんだ。
なぜなら、音楽とダンスは、集団との調和を前提としたうえで、自分の存在をこの上なく肯定できるバイパスだからだ。
音楽するだけで、踊るだけで、一人一人が生きるエネルギーを自家発電できるようになり、具体的な行動へとそれは連鎖していく。
それに、実は日本人は音楽とダンスに向いているしね。
今、自分の活動を通してそういうことを証明していきたという想いが、今までよりも強くなってきている。
おっちゃんが僕に伝えてくれた声を無駄にしないためにも。
・・・・・・・・・🐻・・・・・・・・・
【補足】
MOJADA5はおっちゃんが教えてくれたレンタル会社に頼んで無事開催できた。
ダイジェストがあるので、それだけでも見て欲しい。
あと、去年の夏のイベントはそれぞれアーカイブがあるので、見たい方はこちらからどうぞ。
終わってからやった一人反省会はこちら↓
台風が来た話とか、苦労話です